愛犬の健康を守りたい。
それは、愛犬という家族がいる飼い主さんにとっては共通の願いですよね。
そんな愛犬の健康を守る手段として、恐ろしい病気の発症を未然に防止する「ワクチン接種」があります。
しかし、そんな犬のワクチンには何種類もあり、いったい何をどれだけ、いつの時期に接種すればいいのか、なんだか複雑でわかりにくいものです。
そこでこの記事では、こんな疑問にお答えします。
それでは、順番にみていきましょう。
この記事の目次
1.犬のワクチンは何種類あるの? 予防できる病気はコレ!
では早速、犬が摂取できるワクチン接種の種類を見ていきましょう。
また、それぞれワクチンを接種することで予防できる病気と症状、感染経路も載せていますので、参考にご覧ください。
①狂犬病ワクチン
狂犬病は、人と動物が共通に感染する病気の中で最も恐ろしいと言われている病気です。
現段階では確立された治療方法はなく、その致死率はほぼ100%です。
狂犬病ウィルスは、犬、猫、キツネ、コウモリの他家畜まで、あらゆる動物に感染する強力なウィルスで、特に犬と狼にかかりやすい特徴があるため、狂犬病と呼ばれています。
感染している動物に噛まれると、その唾液から感染します。
進行時期
症状
初期
不安な様子で落ち着かない、暗い場所に隠れる、急に驚いて立ち上がるなどの異常行動や、睡眠障害が1~2日続く。
中期
あてもなくさまよい歩いたり、鼻先に触れるものすべてにかみつく。呼吸困難、けいれんが起こり、渇きをうったえながらも水を飲むこともできなくなる。
尾を股に巻き込み、目は血走り、開口、流涎といった悲惨な状態が2~3日続く。
後期
最後は鎮静となる。筋肉がマヒして歩くこともできなくなる。やがてやせ衰えて死に至る。
日本では60年以上発症例がありませんが、未然に予防できるよう、狂犬病ワクチンを1年に1回接種することが、狂犬病予防法で義務付けられています。
②犬ジステンバーワクチン
犬ジステンバーは、犬が感染する病気の中で最も代表的な病気です。
他の感染症と比べて感染率、致死率ともに極めて高く、特に免疫力の弱い子犬には怖い病気です。
感染している犬の唾液や鼻水、目やに、尿、便などに直接触れたり、なめたりすることで感染します。
部位別
症状
消化器の症状
嘔吐、下痢、粘血便、流涎、食欲不振
呼吸器の症状
せき、くしゃみ、鼻の乾燥、鼻水、呼吸困難
神経症状
神経障害、けいれん、全身マヒ
眼の症状
流涙、結膜炎、充血、角膜炎、緑内障
③犬伝染性肝炎ワクチン
犬アデノウィルスⅠ型が感染することで発症する犬感染性肝炎は、発熱、食欲不振などのほかに、肝炎にかかり死に至ることもある恐ろしい病気です。
特に、子犬では症状も見せることなく突然死することもあります。
犬アデノウィルスは涙や唾液、尿や便に直接ふれたり、なめたりすることで感染します。
症状の分類
症状
突然致死型
数時間前までは元気にしていたのに、突然腹痛をおこし24時間以内に死に至る。
不顕性(ふけんせい)型
感染しているにもかかわらず、なんの症状もないパターン。免疫力がある正常な犬は、この状態の場合がある。
軽傷型
発熱や鼻水、食欲不振などの軽い症状
重症型
40度以上の高熱に加え、食欲不振、下痢、嘔吐、急性の肝炎による腹痛、通常、1週間程度症状が続いたあと、回復に向かう。
回復期には、目の角膜が青くにごる肝炎性ブルーアイが見られることがある。(20日以内に回復)
④犬アデノウィルスⅡ型感染症ワクチン
犬アデノウィルスⅡ型に感染すると、犬伝染性気管支炎を発症します。
症状は、発熱、せき、扁桃腺炎、肺炎、気管支炎などです。
犬アデノウィルスは、他のパラインフルエンザウィルスや犬アデノウィルスⅠ型などと混合感染すると、症状が重くなります。
また、衛生状態の悪い多頭飼いの犬舎や、ペットショップ(ケンネル)で発症するせき(コフ)から感染する病気であることから、別名ケンネルコフとも呼ばれます。
⑤犬パラインフルエンザウィルス感染症ワクチン
犬パラインフルエンザに感染すると、発熱やせき、くしゃみといった症状が主に呼吸器に関する症状が現れます。
感染経路は、感染している犬からのせき、くしゃみによる飛沫感染のほかに、鼻水や尿、便などに直接ふれたり、なめてしまったりしても感染します。
ちなみに、犬パラインフルエンザウィルスもせきやくしゃみが伴うことから、犬アデノウィルスと同じようにケンネルコフと呼ばれる病気の一種で、混合感染を引き起こすことで重症化することもあり、注意が必要です。
⑥犬パルボウィルス感染症ワクチン
犬パルボウィルス感染症は、放置すれば2~3日(子犬の場合1日)で命を落とすこともある恐ろしい病気です。
犬パルボウィルスは非常に感染力が強く、近年はワクチン開発によって少なくなってきたとはいえ、現在でも死亡率の高い伝染病です。
また、室内では6か月以上も生存したまま感染力を失わないため、クレゾールやアルコールによる徹底した消毒が必要となります。
主な症状は、2~6日の潜伏期間を経て、突然の激しい嘔吐に始まり、幾度となく繰り返す下痢の症状が現れます。
ひどくなるとトマトジュースのような血便をするようになり、食欲もなくなり、急激な脱水症状による極度の衰弱を起こします。
発症してからは病気の進行も早いため、早期の集中治療が必要です。
⑦犬コロナウィルス感染症ワクチン
犬コロナウィルス感染症は、コロナウィルス性腸炎とも呼ばれ、その症状は食欲不振、嘔吐、下痢です。
主に感染した糞を嗅いだりなめたりすることで感染します。
成犬が感染した場合には、軽度な症状で済むこともありますが、子犬が感染した場合は症状が悪化しやすく注意が必要となります。
また、下痢があまりにも長引くと重度の脱水症状を引き起こしたり、犬パルボウィルスなどの他のウィルスと混合感染すると、症状が重くなり命を落とす危険もあるため油断できません。
⑧犬レプトスピラ感染症ワクチン(カニコーラ、イクテロヘモラジー、グリッポチフォーサ、ポモナ)
犬レプトスピラ感染症は、スピロヘーターと呼ばれる小さな細菌が感染することで発症し、人と犬が共通で感染する病気です。
犬レプトスピラ感染症は複数の種類に分かれていて、感染した菌のタイプによって、症状が異なるのが特徴です。
主に、ネズミのかみ傷や尿、感染した犬の尿、レプトスピラ菌を含んだ水やダニなどから、皮膚、傷口、粘膜などへレプトスピラ菌が侵入すると感染します。
2.犬のワクチンの費用はいくらかかるの?
では、一般的に犬の予防接種の費用はいくらかかるのでしょうか。
ワクチンの種類 | 料金(単体、混合) | |||
単体 | 6種 | 8種 | 10種 | |
狂犬病 | 2500円 | ー | ー | ー |
犬ジステンバー | ー | 6000円 | 7000円 | 8000円 |
犬伝染性肝炎 | ー | |||
犬アデノウィルスⅡ型 | ー | |||
犬パラインフルエンザ | ー | |||
犬パルボウィルス | ー | |||
犬コロナウイルス | ー | |||
犬レプトスピラ (カニコーラ型) |
ー | ー | ||
犬レプトスピラ (イクテロヘモラジー型) |
ー | ー | ||
犬レプトスピラ (グリッポチフォーザ型) |
ー | ー | ー | |
犬レプトスピラ (ポモナ型) |
ー | ー | ー |
このように、狂犬病ワクチン以外は、混合ワクチンという形で1回にまとめて摂取することになります。
何種の混合ワクチンを受けるかは、ワクチン接種を受ける動物病院で相談することになりますが、基本的には下記のような要素を考慮して決定します。
(犬を飼っている家が多い、ネズミがいるなど)
また、上記の金額は私の通っているKDC動物病院の金額ですので、地域や動物病院による若干の差はあるかもしれません。
あと、KDC動物病院では、ペット会員になると予防接種が割引になるサービスがあって、私もこちらを利用しています。
こちらにKDC動物病院の予防接種料金表を載せておきますので、参考にご覧くださいね。
3.毎年受けるの?犬のワクチンの接種時期を解説
ここまで犬のワクチンの種類と費用を見てきましたが、ワクチンを接種する時期はいつなのでしょうか。
それぞれのワクチンの接種時期についてみていきましょう。
①混合ワクチン
子犬への混合ワクチン接種の時期
混合ワクチンについては、まず子犬の時に3回接種させることが多いようです。
我が家の愛犬も、子犬の時に3回接種しました。
このように、混合ワクチンを接種してから3~4週間程度間隔をあけて次のワクチンを接種します。
混合ワクチンを子犬の時に3回接種させるのには理由があります。
それは、複数回接種することによって、より免疫をしっかり作る効果が期待できる「ブースター効果」が期待できるからです。
確実により強く免疫を作るために複数回接種するということなんですね。
もし、母犬がワクチンを接種したことがなかったり、子犬が母乳をほとんど飲めなかった場合は、母犬から免疫を受け継ぐことができていないため、出来るだけ早期にワクチンを接種するようにしましょう。
この母体移行免疫については、母乳を飲まなくなった後、いつまで子犬の体に免疫が残っているのかというのは犬によって個体差が大きく、実は正確にはわかりません。 さらに、困ったことにこの母乳移行免疫が子犬の体に残っている間は、ワクチンを接種しても効果がないのです。 でも、すべての犬に抗体検査を行うことは、手がかかりますし、費用も掛かるので現実的ではありません。 そこで、接種時期をすべての犬に対して決めてしまい、かつ間隔をあけて複数回接種することで、確実にすべての犬の体に免疫を作れるようにしようというわけなんです。
子犬は母犬から母乳を飲み、母犬の中にある病気に対する免疫を受け継ぎます。これを「母体移行免疫」といいます。
成犬への混合ワクチン接種の時期
成犬になってからの混合ワクチン接種については、子犬の最後の混合ワクチン接種が終わった日から1年後に接種します。
その後は、コアワクチンについては3年に1回、ノンコアワクチンについては1年に1回の間隔で混合ワクチンを接種するといいでしょう。
コアワクチンについては、近年の研究で効果が長持ちすることがわかっており、個体差はあるものの、数年から一生涯、免疫が持続すると言われています。
対してノンコアワクチンについては、1年後には免疫がなくなってしまうため、毎年ワクチンの接種が必要です。狂犬病の免疫についても同じく、1年後には免疫がなくなってしまいます。
②狂犬病ワクチン
子犬への混合ワクチン接種の時期
狂犬病ワクチンの接種時期は、混合ワクチンの3回目が終わった1か月後に接種することが一般的です。
なぜ混合ワクチンの接種後に、1か月間隔をあけて狂犬病ワクチンを接種する必要があるのかというと、もし副作用などで万が一のことがあったときに、原因を特定できるようにするためです。
もし接種する順序が逆になった場合は、狂犬病ワクチンを接種した後、1週間間隔をあけて混合ワクチンを接種します。
成犬への混合ワクチン接種の時期
狂犬病ワクチンは、日本では「狂犬病予防法」により、1年に1回接種することが義務付けられています。
また、狂犬病については、ワクチンを接種したあと1年で免疫がなくなってしまいますので、必ず毎年ワクチン接種を受けるようにしましょう。
狂犬病は日本では1957年(昭和31年)以降60年以上にわたって発生していません。
しかし、世界のほとんどの国では、いまだに5万人の人が毎年死亡しています。
日本では発症例を耳にしない狂犬病ですが、世界ではまだまだ撲滅できていない恐ろしい病気なのです。
4.犬のワクチンの副作用が心配!どんな症状があるの?
では、犬のワクチンをこれだけ接種するということは、副作用も怖いのでは?と思いますよね。
アナフィラキシーショックの症状については、心拍数や呼吸が早くなる、ぐったり動かなくなる、歯茎の色が白くなる、歯茎を押してみた後に元の色に戻るのに2秒以上かかるなどがあります。
とはいえ、ワクチン接種による副作用の発生率は、実は全体の0.6%と言われています。
それに対して、ウィルスの中には発症すると100%近い高確率で死に至る恐ろしい病気もあります。
これは、ワクチンによる副作用は確かに存在するものの、ワクチンを接種せずに高確率で死に至る病気にかかるリスクのほうが高いということが言えます。
ワクチンを接種した後は、激しい運動は避け、家で安静にしながら、愛犬の様子を見てあげましょう。
また、ワクチン接種は午前中が一番望まれる時間帯です。
愛犬に異変を感じたら、午後からでもすぐに動物病院へ連れていくことができるからです。
5.まとめ
いかがでしょうか。
犬が接種できるワクチンの種類には、単体で接種する狂犬病ワクチンと、6種、8種、10種など一括で接種する混合ワクチンがあります。
また、犬にのみ感染するウィルスがあれば、人にも犬にもかかる共通感染症もありました。
ウィルスからの免疫を付けるために行うワクチン接種。
特に免疫の少ない子犬には早めの接種をさせて、免疫をつけることで病気への感染を防ぐことが大切です。
しかし、ワクチンとはいえ疑似的にもわざと病気に感染させるわけですから、ワクチンを接種するには「健康な体であること」という条件があります。
別の病気にかかっていたり、衰弱していたりしては接種させることはできませんので、普段から愛犬の体調管理やストレスをためない生活環境を整えてあげることは、飼い主である私たちの義務だとつくづく感じます。
実際にワクチン接種するときには、動物病院できちんと健康診断をしてもらい、愛犬の体質や生活環境、習慣、年齢をしっかり伝えたうえで、接種するワクチンの種類を決めてあげるようにしましょう。
最後まで読んでいただきまして、本当にありがとうございました。